AGURI UCHIDA

画家、内田あぐりのブログ

9月12日の覚え書き

 

ところで私が内容がないと言ったのは、とかく誤って考えられやすいように、作品の内部とか、作家個人の内的世界、精神のドラマだけを意味しているのではない。

逆にそれと対決する外の世界、社会的な諸条件、そしてその作品が現実的に社会へ及ぼす影響、その働きかけの方を言いたいのだ。つまり内容はうちにあるのではなくて、むしろそういう外にある、といささか逆説めいてくるがそれが真理だ。社会に対する働きかけ、というのは一言で言えば時代と対決し、社会と対決していくことだ。

今日、多くの絵画が社会的諸条件に対して何ら矛盾を感じていない。だから絵かきたちは社会の要求に応じて描いているつもりかもしれないが、それは社会と言ってもごく一部の愛好家の要求に応じているだけであって、例えば建具屋さんが戸、障子や襖をお得意様の注文通りに作って納めるのと少しも変わらない。なるほど世の中のお役に立っているかもしれない。しかしそれが社会を動かし、歴史の原動力になるとは考えられない。

 

                 「絵画における技術とはなにか」  岡本太郎